薬としての運動
運動は、糖尿病とうつ病という二つの疾患に対して、薬物療法にも匹敵するほどの強力な効果を発揮する「良薬」です。ここでは、安全かつ持続可能で、楽しみながら取り組める運動療法について解説します。
7.1 運動がもたらす二重の恩恵
糖尿病に対して
運動は、インスリンに対する体の感受性を高めます。これにより、筋肉がインスリンの助けをあまり借りずに血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用できるようになり、直接的に血糖値を下げる効果があります 23。一度の運動の効果は48~72時間持続するとも言われており、定期的な運動が血糖コントロールを安定させる鍵となります 34。
うつ病に対して
運動は「天然の抗うつ薬」とも言えます。運動中に脳内で分泌されるエンドルフィンやセロトニンは、気分を高揚させ、ストレスを軽減する効果があります 23。また、質の良い睡眠を促し、運動目標の達成を通じて自己肯定感を高め、社会的な交流の機会を生み出すなど、多角的に精神的な健康を改善します 35。
運動がもたらす二重の恩恵
より健康な体と心のための、強力な処方箋
1. 糖尿病に対して:血糖値への直接効果
運動は、インスリンに対する体の感受性を高めることで、血糖コントロールを直接的に改善します。これは、筋肉がインスリンの助けをあまり借りずに、血液中のブドウ糖をエネルギーとして効率的に利用できるようになるためです。
血糖値低下のメカニズム
鍵となる「持続性」
一度の運動による効果は…
この効果を維持するためには、2〜3日に一度の定期的な運動が血糖コントロールを安定させる鍵となります。
2. うつ病に対して:天然の抗うつ薬
運動は「天然の抗うつ薬」とも呼ばれ、多角的に精神的な健康を改善します。脳内の化学物質に直接作用するだけでなく、生活の質や自己認識にも良い影響を与えます。
精神的健康への多角的な効果
運動は、これら4つの側面からメンタルヘルスを総合的にサポートします。それぞれが連携し合い、気分の高揚とストレスの軽減に貢献します。
今日から始める、健康の好循環
定期的な運動は、安定した血糖値、高揚した気分、そして質の良い睡眠という好循環を生み出します。このポジティブなサイクルが、次の運動をさらに容易にし、継続的な健康へと導きます。
まずは短い散歩から、その第一歩を踏み出してみませんか。
7.2 バランスの取れた運動の種類
効果的な運動プログラムは、以下の3種類の運動をバランス良く組み合わせることで構成されます。
| 運動の種類 | 主な役割・効果 | 運動の例 | 目標・目安 |
| 有酸素運動 | ・運動療法の基本 ・リズミカルに体を動かす | ・ウォーキング ・サイクリング ・水泳 | 中等度の強度(少し息が弾む程度)で、週に合計150分以上。 |
| レジスタンス運動 (筋力トレーニング) | ・筋肉量を増やし、ブドウ糖の消費を増やす | ・椅子を使ったスクワット ・壁立て伏せ ・ゴムバンドを使ったトレーニング | 週に2~3回、主要な筋肉群を鍛える。 |
| 柔軟性・バランス運動 | ・体の柔軟性を高める ・転倒予防(特に高齢者) ・心身のリラックス、ストレス軽減 | ・ストレッチ ・ヨガ ・太極拳 | (特記なし) |
- 有酸素運動: 運動療法の基本です。ウォーキング、サイクリング、水泳など、リズミカルに体を動かす運動が該当します。目標は、中等度の強度(少し息が弾む程度)で週に合計150分以上です 34。
- レジスタンス運動(筋力トレーニング): 筋肉量を増やすことは、ブドウ糖の消費を増やす上で非常に重要です。週に2~3回、主要な筋肉群を鍛えることを目指します。自宅でできる運動として、椅子を使ったスクワットや壁立て伏せ、ゴムバンドを使ったトレーニングなどがあります 33。
- 柔軟性・バランス運動: ストレッチやヨガ、太極拳などは、体の柔軟性を高め、特に高齢者の転倒予防に役立ちます。また、心身をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果も期待できます 35。
7.3 安全で継続可能な自宅での運動計画
安全第一
糖尿病を持つ方が運動を行う際には、以下の点に特に注意が必要です。
- 新しい運動を始める前には、必ず主治医に相談する。
- インスリンや一部の血糖降下薬を使用している場合、運動前後に血糖値を測定し、低血糖に備える 36。
- 低血糖時の補食として、ブドウ糖やジュースなどを常に携帯する 33。
- 足に合った靴を履き、運動後は傷や靴擦れがないか毎日足の状態を確認する 33。
- 運動中はこまめに水分補給を行い、脱水を防ぐ 34。
継続は力なり
運動を長続きさせるためのコツは、「無理なく、楽しく」です。
- ゆっくり始める: 最初は短い時間から始め、徐々に時間や強度を増やしていく 34。
- 楽しむこと: 自分が楽しいと感じられる活動を見つけることが最も重要です 36。
- 生活に組み込む: エレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やす 36。
- 細切れでもOK: 30分連続で運動する時間がなくても、「10分間の運動を1日に3回」といった形でも同等の効果が得られます 36。
表3:初心者向け・自宅でできる週間運動プラン(例)
| 午前 | 午後 | |
| 月曜日 | 15分間の早歩き | 10分間のストレッチ |
| 火曜日 | 休息 | 椅子スクワット & 壁立て伏せ(各10回×2セット) |
| 水曜日 | 20分間の早歩き | 休息 |
| 木曜日 | 休息 | 椅子スクワット & 壁立て伏せ(各12回×2セット) |
| 金曜日 | 20分間の早歩き | 10分間のストレッチ |
| 土曜日 | 好きな活動(例:ラジオ体操、軽い庭仕事など)30分 | 休息 |
| 日曜日 | 休息 | 休息 |
このプランはあくまで一例です。ご自身の体調や体力に合わせて、無理のない範囲で調整し、まずは体を動かす習慣をつけることから始めましょう。
引用文献
23
【医師監修】糖尿病とうつ病の関係性を解説 – 板谷内科クリニック, 8月 31, 2025にアクセス、 【医師監修】糖尿病とうつ病の関係性を解説
33
なるほど、なっとく運動療法 – 市川市医師会, 8月 31, 2025にアクセス、 https://www.ichii.or.jp/torikumi/advice_pdf/exercise.pdf
34
糖尿病予防のための運動ガイド:効果的な方法と実践のコツ – 板谷内科クリニック, 8月 31, 2025にアクセス、糖尿病予防のための運動ガイド:効果的な方法と実践のコツ
35
「運動」と「マインドフルネス」で糖尿病の人のメンタルヘルスを改善 ストレス緩和に役立ち血糖値も低下 | ニュース, 8月 31, 2025にアクセス、 https://dm-net.co.jp/calendar/2023/037471.php
36
糖尿病と運動療法〜毎日続けられる効果的な運動で血糖コントロールを改善しましょう, 8月 31, 2025にアクセス、 https://tanno-naika.jp/blog/post-893/


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