糖尿病とうつ病の併存-ストレス管理と心理療法

糖尿病とうつ病の併存-ストレス管理と心理療法

心の回復が体調の改善につながります

「糖尿病と上手につきあっていきたいのに、なんだか気持ちが晴れない…」 そんな風に感じることはありませんか?

お食事や運動といった体のケアはもちろん大切です。でもそれと同じくらい、ストレスや不安といった心のケアも、すこやかな毎日を取り戻すためには欠かせない要素です。

私たち訪問看護師は、皆さんの身近にいる看護師です。 お体の調子だけでなく、なかなか気付けなかった心の変化にも目を向け、解決に向けてじっくりお話を伺うことができます。

安心して何でも話せる関係を大切にしながら、心と体の苦痛を和らげるお手伝いをさせていただきます。

あなたらしい生活を送れることを願って。

8.1 ストレスと血糖値のつながりを管理する

心理的なストレスがストレスホルモンの分泌を促し、血糖値を上昇させるという生理学的なつながりを再認識することが重要です 10。つまり、ストレスを効果的に管理することは、血糖値を直接コントロールする手段の一つとなり得ます。日常生活に手軽に取り入れられるストレス軽減法には、以下のようなものがあります。

  • マインドフルネスと瞑想: 「今、ここ」の瞬間に意識を集中させることで、頭の中の雑念を静め、心を落ち着かせます 35
  • 深呼吸・腹式呼吸: ゆっくりとした深い呼吸は、心身をリラックスさせる副交感神経を優位にし、高ぶった神経を鎮める簡単な方法です 12
  • 良質な睡眠: 規則正しい睡眠スケジュールを保ち、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の質を高める工夫は、気分とインスリン抵抗性の両方を改善します 39
  • 趣味や楽しみの時間: 日常の義務から離れ、自分が心から楽しめる活動に没頭する時間を持つことは、精神的なリフレッシュに繋がります 39

8.2 認知行動療法(CBT)入門

認知行動療法(CBT)は、うつ病に対して有効性が科学的に証明されている代表的な心理療法です。その基本的な考え方は、人の気分は出来事そのものではなく、その出来事をどのように受け止め、考えるか(認知)によって影響されるというものです。CBTでは、つらい気分を引き起こす、偏った、あるいは非現実的な考え方の癖に気づき、より柔軟でバランスの取れた考え方ができるように支援します 40

糖尿病患者の例で考えてみましょう。

  • 自動思考(うつ的な考え方): 「また血糖値が高かった。私は何をやってもダメな人間だ。」
  • CBTによる考え方の見直し: 「血糖値が高かった、という事実がある。これは私の価値を判断するものではない。何が原因だったか、食事や活動の記録を見直してみよう。これは次に活かすためのデータだ。」

このように、出来事の捉え方を変えることで、不必要な自己否定から抜け出し、建設的な問題解決へと向かうことができます。CBTは、うつ症状を改善するだけでなく、結果的に血糖コントロールの向上にもつながることが報告されています 24

8.3 行動の力:行動活性化療法

行動活性化は、CBTの中でも特に重要な技法の一つです 40。うつ病になると、気力が湧かず、これまで楽しめていた活動や、やるべきことから遠ざかりがちになります。そして、何もしないでいると、さらに気分が落ち込み、無力感が強まるという悪循環に陥ります。

行動活性化は、この悪循環を断ち切るために、「気分が乗らなくても、まずは行動してみる」ことを目指します 43。目標は「散歩に行きたい気分になること」ではなく、「5分間の散歩をスケジュールに入れて、実行すること」です。小さな行動でも、実際にやってみることで達成感が得られたり、気分が少し晴れたりすることがあります。この「行動が気分を変える」という体験を積み重ねることが、回復への大きな一歩となるのです。これは、無力感に苛まれている患者にとって、非常に力強いアプローチです。

行動活性化でうつ病の悪循環を断ち切る

行動活性化でうつ病の悪循環を断ち切る

「気分が乗らない」から「行動してみる」へ

うつ病の悪循環

  • 気力が湧かない: 楽しい活動ややるべきことから遠ざかる。
  • 行動の減少: 何もしない時間が多くなる。
  • 気分の悪化: さらに気分が落ち込み、無力感が強まる。

行動活性化の目標

「気分が乗らなくても、まずは行動してみる」こと。

例: 「散歩に行きたい気分になる」ではなく、

「5分間の散歩をスケジュールに入れて、実行する」

回復へのプロセス

  • 小さな行動から: 実際にやってみることで達成感が得られる。
  • 気分の変化: 気分が少し晴れる体験をする。
  • 「行動が気分を変える」: この体験を積み重ねることが、回復への大きな一歩となる。

無力感に苛まれる患者にとって、非常に力強いアプローチです。


引用文献

10:うつ病と糖尿病|メカニズム解説#脳科学者 – YouTube, 8月 31, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=VeLl71d2dcw

12:糖尿病とストレスについて, 8月 31, 2025にアクセス、 糖尿病とストレスについて

35:「運動」と「マインドフルネス」で糖尿病の人のメンタルヘルスを改善 ストレス緩和に役立ち血糖値も低下 | ニュース, 8月 31, 2025にアクセス、 https://dm-net.co.jp/calendar/2023/037471.php

39:ストレスで血糖値が上がる?糖尿病患者が知るべき対策3選【千葉・茂原・長生村】, 8月 31, 2025にアクセス、 https://amagadai-fc.com/syokuji/sutoresukettou/

40:認知行動療法(CBT)とは, 8月 31, 2025にアクセス、 https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php

43:うつ病に効果的な行動活性化療法とは? – 田町三田こころみクリニック, 8月 31, 2025にアクセス、 https://cocoromi-mental.jp/psychological-therapy/behavioral-activation/


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