二つの疾患への相乗的マネジメント
糖尿病とうつ病を併発した場合、それぞれを別々の問題として治療するのではなく、両者を一つの連続した課題として捉え、連携して治療にあたる「統合的アプローチ」が最も効果的です。
5.1 統合的ケアの論理的根拠
糖尿病とうつ病を同時に治療することは、双方の予後を改善するという明確なエビデンスがあります 7。この二つの治療は互いに良い影響を与え合います。うつ病の治療によって意欲や気力が回復すれば、糖尿病の自己管理(食事、運動、服薬)への取り組みが改善し、結果として血糖コントロールが向上します 10。一方で、血糖コントロールが安定すれば、体への生理的ストレスが軽減され、気分の浮き沈みが少なくなり、うつ症状の緩和につながる可能性があります。このように、心と体の両面からアプローチすることで、治療の相乗効果が生まれるのです。
5.2 連携して支えるケアチーム
理想的な統合的ケアは、多職種の専門家が連携して患者を支えるチームによって提供されます。
- 主治医・糖尿病専門医: 糖尿病治療薬の管理や身体的な健康状態全般を監督します。
- 精神科医・心療内科医: うつ病の診断と、薬物療法や精神療法による専門的な治療を行います。
- 訪問看護師: 患者の生活の場に最も近い存在として、専門家間の橋渡し役を担います。日々の健康状態(身体・精神)を観察し、服薬管理や自己注射の支援、療養生活上のアドバイスを行うなど、ケアの中心的な調整役となります 21。
- 管理栄養士、理学療法士など: 食事や運動に関する専門的なサポートを提供します。
5.3 治療法の概観
統合的ケアでは、主に以下の治療法が組み合わせて用いられます。
- 薬物療法:抗うつ薬は、糖尿病患者においても抑うつ症状の改善に有効です 1。ただし、一部の抗うつ薬は血糖値に影響を与える可能性があるため、糖尿病の治療状況をよく理解している主治医や精神科医と密に連携しながら、慎重に薬剤を選択し、血糖値の変動を注意深く観察する必要があります 23。
- 精神療法:認知行動療法(CBT)などの心理学的アプローチは、うつ病治療の柱の一つです 8。薬物療法と並行して、あるいは単独で行われます。
- 生活習慣への介入:食事、運動、ストレス管理は、単なる補助的なアドバイスではなく、統合的治療計画に不可欠な要素です。これらは糖尿病と抑うつ症状の両方に直接的な効果をもたらすため、治療の土台と位置づけられます。

引用文献
1:糖尿病とこころ – スマート・ライフ・プロジェクト, 8月 31, 2025
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-05-006
7:うつ病は糖尿病の危険因子 うつ病を治療すると血糖管理も改善 両方を良くする「マインドフルネス」とは? | ニュース, 8月 31, 2025
https://dm-net.co.jp/calendar/2023/037910.php
8:うつ病 – 糖尿病情報センター, 8月 31, 2025 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/070/010/03.html
10:うつ病と糖尿病|メカニズム解説#脳科学者 – YouTube, 8月 31, 2025|https://www.youtube.com/watch?v=VeLl71d2dcw
21:【簡単に解説】糖尿病の予防方法と訪問看護の役割も紹介! | 八尾市 …, 8月 31, 2025 https://nijireha-yao.com/?p=7458
23:【医師監修】糖尿病とうつ病の関係性を解説 – 板谷内科クリニック, 8月 31, 2025
【医師監修】糖尿病とうつ病の関係性を解説


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