自己効力感 -心理学-
第4回の記事で触れた「自分にもできる」という感覚は、心理学の用語で**「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」**と呼ばれます。カナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、医療やリハビリテーションの現場において、患者様のモチベーションを左右する最も重要なキーワードの一つです。
単なる「自信」とは少し異なり、「ある特定の状況や課題に対して、自分は適切な行動をとることができる」という具体的な確信のことを指します。
例えば、「自分は運動神経が良い(漠然とした自信)」ではなく、「今の自分でも、手すりを使えばトイレまで一人で歩けるはずだ(自己効力感)」という感覚です。

このイラストは、Fridolin freudenfett 氏による写真「Albert Bandura Psychologist」をAIによってアニメ風に加工(改変)したものです。
ライセンス:CC BY-SA 4.0
※このイラスト自体も、元のライセンスに基づき CC BY-SA 4.0 の下で公開されます。
訪問リハビリが自己効力感を高めやすい理由
自己効力感は、主に以下の4つの要因から作られると言われています。当ステーションの訪問リハビリでは、日々の介入の中でこれらを自然と引き出しています。
1. 達成経験(成功体験):最も強力な要因
第4回にある「できた!を積み重ねる」がまさにこれに当たります。「自宅のお風呂にまたげた」「近所のコンビニまで歩けた」という、生活に直結したリアルな成功体験は、「次もできるかもしれない」という強力な自己効力感を生み出します。
2. 代理経験(モデリング)
自分と似た状況の人が成功しているのを見聞きすることです。私たちスタッフが、「同じような症状だった〇〇さんも、今はご自身で歩いて買い物に行かれていますよ」とお伝えしたり、実際にスタッフがお手本を見せたりすることで、「それなら自分にもできるかも」という感覚を引き出します。
3. 言語的説得(励ましとフィードバック)
「リハビリを頑張りましょう」という抽象的な言葉ではなく、「先週よりも膝が2センチ高く上がっていますよ」「歩く時の姿勢がすごく安定してきましたね」と、専門職の視点から具体的かつ客観的な成長を伝えることで、ご本人の確信を深めます。
4. 生理的・情動的喚起(心身の状態)
心身がリラックスし、痛みが少ない状態であることも重要です。住み慣れた「ご自宅」という安心できる環境でリハビリを行うこと自体が、過度な緊張や不安(「転んだらどうしよう」など)を和らげ、「今日も動けそうだ」という前向きな心理状態を作り出します。
「やらされるリハビリ」から「やりたくなるリハビリ」へ
自己効力感が高まると、人は困難な課題にも粘り強く取り組めるようになります。 私たち訪問リハビリのスタッフは、利用者様の生活動線の中から「ちょっと頑張れば達成できるスモールステップ」を見つけ出し、この自己効力感を育むことを何より大切にしています。
参考サイト
1. 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)
- ページ名: 運動を習慣化する仕組み(行動変容とその維持)
- URL: https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-zoushin/undou-tudukeru.html
- おすすめの理由: 高齢者の運動習慣化において、成功体験や代理体験(モデリング)を通じて「自己効力感」を高めることの重要性が、リハビリや介護予防の視点から非常に分かりやすく解説されています。
2. 厚生労働省「こころの耳」
- ページ名: セルフエフィカシー:用語解説
- URL: https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1633/
- おすすめの理由: 厚生労働省が運営するメンタルヘルス・ポータルサイトです。自己効力感が「目標達成のための努力を促し、結果的に成功の可能性を高める重要な要素」であると端的に定義づけられており、公的機関の辞書的な引用として最適です。
3. 厚生労働省「e-ヘルスネット」
- ページ名: 行動変容のステージモデル
- URL: https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-07-001
おすすめの理由: 運動などの新しい行動を始め、継続していくための仕組み(セルフ・エフィカシーの働き)について解説されています。


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