運動と脳の幸せな関係
「訪問リハビリを始めてから、表情が明るくなった」
ケアマネジャー様やご家族から、私たちはよくこのようなお声をいただきます。
実はこれ、単に「お喋りが楽しいから」だけではありません。運動が生理学的に脳を活性化させ、心にポジティブな作用を及ぼしている証拠なのです。今回は、体が動くと心も動く、その驚きのメカニズムを解説します。
※厚生労働省の最新指針『健康づくりのための身体活動・運動ガイド』に基づいた情報を掲載しています。
1. 「リハビリ」が「脳の若返り」につながる理由
リハビリは単なる「筋トレ」ではありません。最大のメリットの一つは**「脳への良い刺激」**にあります。
① 脳の栄養剤「BDNF」の分泌
運動をすると、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増えることがわかっています。これは例えるなら「脳の肥料」です。
- 効果: 脳細胞の生存を助け、神経同士の新しいつながりを促進します。
- メリット: 記憶力を司る「海馬」が活性化し、認知症の予防や記憶力の維持に役立ちます。
② 血流アップで脳に酸素とエネルギーを
脳は体の中で最もエネルギーを消費する組織です。運動で心拍数が上がると、脳への血流量が劇的に増加します。
- 効果: 新鮮な酸素とブドウ糖(エネルギー)が脳の隅々まで行き渡ります。
- メリット: 頭がスッキリし、思考がクリアになります。
③ 「幸せホルモン」がメンタルを整える
運動は、心の安定に関わる神経伝達物質の分泌を促します。
| ホルモン名 | 役割・メリット |
| セロトニン | 「幸せホルモン」と呼ばれ、不安を和らげ、心を穏やかにします。 |
| ドーパミン | 「やる気」や「達成感」をもたらし、前向きな気持ちにします。 |
| エンドルフィン | 痛みを和らげ、高揚感(多幸感)をもたらします。 |
2. 【実践編】脳が目覚める!1日5分の「シナプササイズ」
脳の司令塔である「前頭葉」を刺激するには、体と頭を同時に使う「二重課題(デュアルタスク)」が一番のご馳走です。自宅の椅子に座ったままできるメニューをご紹介します。
5分間のタイムスケジュール
| 時間 | 項目 | 内容 | 狙い |
| 1分 | 深呼吸&背伸び | 鼻から吸って口から吐く | 脳へ酸素を送り込む |
| 2分 | ズレズレ指体操 | 左右で違う指の動きをする | 脳のネットワーク活性化 |
| 2分 | 足踏みしりとり | 足を動かしながら言葉を出す | 認知機能と運動の統合 |
各ステップのポイント
- ステップ1:深呼吸
4秒かけて鼻から吸い、8秒かけて口から細く吐きます。吐く時間を長くすることでリラックスの神経が整い、脳が活性化しやすくなります。 - ステップ2:ズレズレ指体操
右手は「グー・チョキ・パー」、左手はワンテンポ遅れてスタート。「あれ?できない!」と脳が混乱している時こそ、新しい神経回路が作られています。 - ステップ3:足踏みしりとり
リズムよく足踏みをしながら「りんご→ゴリラ…」としりとりをします。慣れたら「野菜の名前」などお題を変えてみましょう。

3. ケアマネジャー様・ご家族様へ
外出機会が減り、刺激が少なくなりがちな在宅療養において、定期的な訪問リハビリは「身体機能の維持」だけでなく、「心の健康(メンタルヘルス)」を守る重要な役割を果たしています。
リハビリのアドバイス
運動中は「間違えること」をぜひ楽しんでください。「間違えるほど脳が若返っている証拠ですよ!」というポジティブな声掛けが、利用者様の意欲を引き出します。
リハビリの前後で、「言葉のスムーズさ」や「表情の明るさ」に注目してみてください。それは脳がしっかりと目覚めたサインです。
関連情報・参考サイト
本記事は、以下の公的機関の最新指針および研究データに基づき作成しています。
- 厚生労働省 健康づくりサポートネット(旧 e-ヘルスネット)
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
- ※運動が認知機能やメンタルヘルスの向上に効果がある旨が明記されています。
- 休養・こころの健康
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
- 国立長寿医療研究センター
脳由来神経栄養因子(BDNF)に関する知見
- 運動による神経可塑性の向上および認知機能改善のメカニズム(生理学・リハビリテーション医学の標準的な知見に基づく)


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