前回の第3回では、私たちが仕事や介護などで「気が張っている」時、体の中では免疫細胞が最前線へ緊急出動し、さらにアドレナリンなどのホルモンが風邪の症状を「隠蔽(マスキング)」しているという驚きのメカニズムをお話ししました。

忙しい時に限って風邪をひかないのは、体がウイルスを完全にブロックしているのではなく、「症状を感じないようにして、無理がきくようにエネルギーを先取り(オーバーワーク)している状態」なのです。
今回は、そのように無理を重ねてきた体を安全に元に戻し、気が緩んだ途端にドッと熱を出す(レットダウン効果)のを防ぐための、具体的な「オフ・スイッチ」の入れ方をご紹介します。

突然の「ドスン」ではなく、「ソフトランディング」を目指す
大きなプロジェクトが終わった週末や、連休の初日。疲れ果てて「泥のように眠る」「1日中ソファから動かない」という過ごし方をした経験はありませんか? 実は、精神神経免疫学の観点から見ると、これは一番風邪をひきやすい危険な休み方です。
常にピンと張り詰めていた交感神経(緊張の糸)が、突然プツンと切れて急降下すると、免疫システムは混乱し、防衛線が一気に崩壊してしまいます。飛行機の着陸と同じで、上空(緊張状態)からいきなりエンジンを切って墜落するのではなく、滑走路に向かって徐々に高度を下げていく「ソフトランディング(軟着陸)」が体にも必要なのです。

科学的に正しい休養:「積極的休養(アクティブレスト)」
ソフトランディングのために効果的なのが、ただゴロゴロする「消極的休養」ではなく、軽く体を動かしたり、意識的にリラックス状態を作ったりする「積極的休養(アクティブレスト)」です。 自律神経のスイッチを「交感神経(緊張)」から「副交感神経(リラックス)」へ、自分の意志でなめらかに切り替えるための3つのテクニックをご紹介します。
- テクニック1:呼吸で「自律神経」を直接ハックする 自律神経は通常、自分の意志ではコントロールできません。しかし、唯一「呼吸」だけが、自律神経に直接アクセスできるスイッチです。ポイントは「吸う時間の倍の時間をかけて、ゆっくり吐くこと」。息を長く吐く時、体はリラックスを司る「迷走神経(副交感神経)」を強く刺激します。
- テクニック2:一定のリズム運動で「セロトニン」を出す ウォーキングや自転車こぎなど、一定のリズムを刻む運動は、安心感をもたらす脳内物質「セロトニン」の分泌を促します。「少し息が上がる程度の散歩」が、張り詰めた神経をクールダウンさせるのに最適です。
- テクニック3:意図的な「非日常」への没入 「仕事や介護の現場」から物理的・心理的に離れる時間を作ります。脳が「ここは戦場ではない」と認識することで、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が安全にストップします。

| 「非日常への没入」とは 日常の現実から離れ、特定の物語や世界観、空間の中に自分自身が「当事者」として深く入り込む体験を指します。 近年では「イマーシブ(Immersive)」という言葉で語られることが多く、単に外から鑑賞するのではなく、五感を通じてその世界の一部になる感覚が重視されています。 |
西東京市で実践!おすすめの「ソフトランディング」スポット
私たちの訪問エリアである西東京市には、この「積極的休養」にぴったりの場所があります。
- 「田無神社」で深呼吸(非日常への没入) 境内に入ると、街の喧騒から切り離されたような凛とした空気が漂います。ご神木を見上げながら「長く吐く深呼吸」を行うだけで、最高のソフトランディングになります。
- 「千川上水」沿いの緑道さんぽ(リズム運動) 水辺の木漏れ日の中を、少しだけ早歩きで散歩してみてください。一定のリズムで歩くことで頭の中の「仕事モード」がスッキリと洗い流されます。
まとめと次回予告
いかがでしたでしょうか。プロ意識が高く、責任感が強い人ほど、無意識のうちに将来の体力を切り崩してまで頑張りすぎてしまいがちです。
休むことは「サボり」ではありません。次の日も最高のパフォーマンスを発揮し、大切な人を守り続けるための「最も重要なプロの仕事(セルフケア)」です。張り詰めた糸が切れてしまう前に、ご近所のスポットを活用して、意識的に優しいオフ・スイッチを入れてみてくださいね。
さて、次回(第5回)は、私たちの人生の3分の1を占める「睡眠」と免疫の深い関係についてお話しします。お楽しみに!


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